2016年4月13日水曜日

1227 老猫と腎臓病(腎不全)11 老猫と暮らすための本をみつけました(その1)


私が子供の頃、猫の寿命は5〜6歳でした。我が家に猫どもが来た14年前では完全室内飼いで12〜13歳と言われ、ずいぶん長生きするようになったんだなぁと思った記憶があります。
ところが、今はなんと平均で15歳!20歳になっても元気な猫もいるのだとか。

昔と違って猫のごはんも飼い方もずいぶん変わりました。獣医学もずいぶん進歩してますし、近年は腎不全の犬猫のための人工透析機器まであるそうです。

でも、人間と同様、長寿になるとまた別の問題も。
老い特有の体の変化、病気、ごはんも高齢用にしないとならないし、高いところに飛び乗れないなどの行動の変化から居住環境も考慮しなければなりません。

さらに、高齢猫に多い腎不全では皮下点滴などの医療行為を飼い主自ら行ったり、寝たきりになった場合の介護方法も考えないとなりません。
これほど猫も高齢化するとは想像だにしていなかったので、実際、どこに気をつければいいのかはっきりと分かってはいませんでした。

動物病院でも一般論的なアドバイスや高齢猫独特の病気の対処法は教えてくれますが、健康な老猫との付き合い方まではなかなか手が回らないようです。そうなると飼い主が手探りで構築しネットなどに蓄積していったものを参考にさせてもらう。今はそんな過渡期なのかもしれません。

それでも、わらにもすがるように何かもっと手がかりはないかと、先日本屋さんで紙の本を当たってみました。
すると、ちょうど同じような時期に出たと思われる2冊の本に出合いました。1冊は和書、もう1冊はアメリカ人著者の翻訳ものでした。

  • 猫とさいごの日まで幸せに暮らす本(加藤由子:著、小泉さよ:絵)
  • 年老いた猫との暮らし方・飼い主たちの体験から(ダン・ポインター:著、脇山真木:訳)


少々長くなりそうですので、1冊ずつ紹介していきたいと思います。
まずは和書の「猫とさいごの日まで幸せに暮らす本」から。

著者の加藤由子氏は「ネコを長生きさせる50の秘訣」(2009年)という実用書を書いており、当時すでに7歳だった猫どもの世話をするうえで大変参考になった本でした。
この本では、猫を飼い始めるための準備から子猫を迎えて看取るまでの飼い方の注意点などが具体的に書かれています。

 猫の一生を網羅した本ですのでどうしても老齢期の部分も他の項目と同じくらいかそれ以下の割合となってしまっていて、老猫とどう向き合うか、どういうところに注意すべきかなどを掘り下げる本の趣旨ではないため、今、自分の猫が高齢化した際の手引きとしては物足りなさを感じていました。(でも、初めて猫を飼う人には今でもオススメしています。良書です。)

そこへ満を持してという感じで私の目の前に現れたのがこの「猫とさいごの日まで幸せに暮らす本」でした。
内容は、

Part1 猫の一生を考える
Part2 コミュニケーションと絆を不動のものに
Part3 老猫の毎日の世話と環境づくり
Part4 健康チェックとかかりやすい病気
Part5 最期の看取り方  

以上の5部構成になっています。まさに私が探していた情報です。

Part1では、昔は考えもしなかった「高齢化した猫」とどう向き合って過ごすか、ある意味では飼い主の「覚悟」について書かれていると思います。私事ですが、くだんの猫が医者から腎不全を宣告され、「腎不全=治らない=すぐ死んじゃう!?」とパニクってしまったので、このPart1は落ち着きを取り戻す一助となりました。

ここではまず、近年猫の飼育環境が向上したことで猫の寿命が延び、これまでの飼い主が「猫が老いを迎えやがてそばで死を迎える」ということが未体験のため、現代の猫飼育のノウハウとして老いた猫との接し方、健康維持の方法、最期の迎え方を新たに考え、模索し、知恵を蓄積していかねばならないと説いています。

なかでも読んでいてドキッとしたのが、

ペットを飼うとは本来、その動物の一生を見届けるということなのです。成長を楽しみ、ともに暮らすことを喜び、そして死期が近づいたことを認め慈しみ最期を看取り、納得して送り出す一連のことをいうのです。(P16~17)

今の猫どもを子猫のときに迎えた際、最期まで面倒をみる覚悟はしていたけれど、いざ腎不全、余命などを認識させられると果たして自分が納得して送り出せるかどうか心許ない気がします。
そんなとき、この本のような「道しるべ」があれば心の準備ができそうです。

自分の子どものような存在だった猫が死ぬのは辛いことです。でも、否定してはならないことです。(中略)
大切なのは、どんな一生を送ったかということです。その一生をしめくくるのが老後です。猫の老後が、それまでと変わらず豊かで快適な暮らしであれば、猫は幸せな生をまっとうできるのだと思います。(P17)

これは、別途紹介するもう1冊の本にもあったのですが、つまり「命の長さ」ではなく「命の質」が大事なのだということだと思いました。つまり、老猫のQOLを保つこと、これが大事なのだということです。
健康な老猫もいれば、病気の老猫、病気ではないにしても老衰で動けなくなっている猫など、様々な状態の猫のQOLをどうやって保っていけばいいのでしょうか?

難しく考えることはありません。長い時間をかけて猫との間に築いてきたお互いの気持ち、それを保つことだと考えればいいのです。(P22)
「ゴハンがほしい」「抱っこしてほしい」(中略)「ドアを開けてくれ」と、人の都合を無視した要求の連続に飼い主は楽しくも振り回され続けます。でも猫は、「要求をきいてくれる」と信じているから要求するのです。そして、そう信じる猫に育てたのは飼い主です。(中略)その「あうん」の呼吸、それが世界にひとつしかない関係なのです。その関係の基盤にあるお互いの気持ちを大切にすることを考えればいいのです。(P23)

なんだか耳が痛い(本だから「目が」痛い?)話ではあります。今更ながら反省しきり。
それはさておき、では、いつから「老猫」になったと判断し、QOLに気をつけていけばいいのでしょうか?10歳?12歳?

猫と暮らすということは「手がかかる」ことです。(中略)それがある日、「手がかからなくなった」と気づきます。寝ている時間が多くなるせいで要求がなくなり、朝夕の食事とトイレ掃除以外、なにもすることがなくなっていることに気づくのです。(中略)「そういえば最近、手がかからなくなった」と思った時、そのときが猫の老後のQOLを考えるターニングポイントだと考えましょう。(P24)

ただし、それは積極的に猫をかまうということではないと断言します。

猫が飼い主に抱いているであろう気持ちに寄り添うという意味です。(P24)

今まで一緒に暮らしてきた経験から、飼い主にしか分からない猫の気持ちを察する。猫が寝ているならそのまま寝かせておけばいいのか、静かにそばに寄り添ったほうがいいのか、ちょっと頭や背中をなでたりされるのが子猫の頃から好きだったなぁとか、そうやって判断していく。これが老後のケアとQOLの出発点だといいます。

Part2では、若いときとは違う老猫独特のコミュニケーションの取り方について書かれています。

老猫は何をするにもスローになるので、飼い主は待ちの姿勢が大事なのだとか。例えば、若い頃なら抱っこして欲しいときにはすぐ膝に飛び乗ったけれど、老猫になると目の前にやってきてもじっと動かず、しばらく考えてから行動に移すことが多くなるため、飼い主は「抱っこして欲しい」という気持ちに気づかずその場を立ち去ってしまい、後には呆然とした老猫が残されるという哀れなシチュエーションになることも。

なので、待ちの姿勢で接すること、そして次に老猫向けのスキンシップをしようと提案します。それはPart1にもありましたが、ぐりぐりいじることではなく、「猫の良き昼寝場所になる」「スキンシップの発展型としてのマッサージをする」などを提案しています。

たしかに昼寝場所として膝上を提供するのは良い方法ですね。我が家では若いときから習慣化していますが、一度寝たら1〜2時間起きてこないなど老猫になればどんどん昼寝時間が長くなりますので、飼い主側もそれなりの準備(トイレを済ます、本などを用意する)が必要になります。

その他には、少々驚いたのですが「いくつになっても猫は遊び心を失わない」ということでした。だから老猫なりの遊びをしてあげるのもコミュニケーションのひとつだといいます。
しかし、我が老猫に若いときのおもちゃをちらつかせても最初は興味を示して狩りの姿勢をとるけれど、すぐに飽きてどっかに行ってしまいます。

これもやはり若いときのようなジャンプを伴う遊びではなく、老猫なりの「狩りの本能」を引き出すような遊び方、たとえば目の前の床にロープ状のものをゆっくり這わせるように動かす、丸めた紙を目の前に転がすなど、静かな動きの遊びなら乗ってくることもあるようです。

Part3では毎日の世話と環境作りについて説明しています。まずは基本の老猫用ごはんの紹介と与え方の工夫について。
足腰が弱くなってくるので、皿を台に乗せて高くしたり、ウェットフードなら少し温めて香りを立たせるなどすると良いそうです。

余談ですが、我が家の今年14歳の猫は台に乗せたら嫌がって床に置いたほうの皿に行きました。ウェットフードも温めるより室温(缶を開けたときの温度のまま)のほうがお好みのようです。
ただ、もう1匹は点滴直後は輸液が前足の付け根に溜まってかがむのが辛いようで、こちらは4センチくらいの台にのせると食べやすそうにしていました。

食べ物では、キャットフード「以外」のもので健康に害のない「特別に大好きなもの」を探しておくのがキモだそうです。これを1〜2ヶ月に1度、ごほうび程度の少量を与えて記憶させておきます。そしていざというとき、つまりキャットフードを食べなくなったときにこれを与えることで食欲が戻るということがあるのだそうです。なので、好物だからといって頻繁に与えすぎないように気をつけないとなりませんね。

この他、水をたくさん飲んでもらうことも大事で、新鮮な水が飲めるよう何カ所かに水飲み場を作ると良いそうです。
ただ、多飲多尿だと腎臓病なども考えられますので、「たくさん水を飲んでいるから」と安心せず、日頃からどれだけ飲んでいるのが「平常値」なのか観察し、急に水を飲むのが増えたなぁと思ったら病院で念のために検査したほうがいいかもしれません。

さて、昔から「猫は家に付く」と言われるように、住環境の変化は特に老猫にとってはストレスになりますので、引っ越しは10〜12歳くらいまでに終わらせるのが望ましいのだそうです。
(ちなみに我が家は13歳で1年間に2回も仮住まいと戻りの引っ越しをしました。その後に腎不全発覚・・・)

やむを得ない場合は、なるべく引っ越しでゴタゴタしてる場面に遭遇させない(どこかに預けるなど)、新しい家のレイアウトを以前と同じようにするなど心がけるのがいいそうです。
(またまた我が家の例で恐縮ですが、まず一部屋の荷物を全部先に出して空っぽにし、そこに猫と飼い主と猫トイレ、フード、水、お気に入りの敷物などを確保してじっとしていました。そしてなるべく猫とスキンシップをして落ち着かせました。)

また、引っ越しをしないまでも、歳を取って危険だからとキャットタワーを撤去したり、お気に入りだった高い場所に登らせないようにするのもストレスになるのでNGだそうです。そうではなく、怪我をしないよう上り下りできるように踏み台や椅子を置いたり、マットを敷いたりする。ずっと住んでいる家だからこそ大幅なレイアウトの変更はしないほうがいいのですね。

この他、寝る時間が長くなる老猫のためにベッドの材質を変える、失禁対策として猫トイレ周りなどにペットシーツを敷く、夜に老猫と一緒に寝る飼い主は布団やベッドに人間の介護用の防水シーツやベッドパットを使うという手があるそうです。これは猫が若いときから毛玉をベッドの上に吐かれたことがあったので「もっと早く知っていれば・・・」な知識でした。

Part4では、老猫がかかりやすい病気が症状からわかるチェックボックス付きの一覧表があり、これがわかりやすくて秀逸でした。
一番大事なのは、どんなに元気そうに見えても老いとともに病気は知らず知らずに忍び寄ってくるものだという認識だと思います。本書でも指摘していますが、若いとき以上に猫の何気ないしぐさ、水を飲む姿勢や回数、トイレに入ったのになかなか排泄しない、寝ている姿勢が今までとは違う、足の筋肉が落ちているなど、毎日観察するくらいの気持ちで注意してみてあげてください。

本書では老猫がかかりやすい病気の解説や対処法なども書かれていますが、まずは「変だな?」と感じたら「病院に行くのは大げさかも」などと思わずに通院することをオススメします。医者や周囲に「大げさだなぁ」と思われたとしても、そのときはラッキーだったと思うことにしましょう。病院に行くのをためらって手遅れになったり「もっと早く行っていれば」と後悔するよりずっといいはずです。ただ、あまり神経質になると通院が猫にストレスになる可能性もありますので加減が難しいところですが。

Part5は辛いけれど避けて通れない「最期の看取り方」についてです。「いずれ最期の日が来ることを念頭におく」というサブタイトル、「その日は必ず訪れる」という小見出しがあるのですが、分かっていても目をそらしたくなる現実ではあります。

猫が15歳に近くなったら、どんなに元気そうに思えてもいつかは死が訪れるということを本気で考えておきましょう。飼い主は愛猫との暮らしが永遠に続くような気がしているものですが、それは願望でしかないという現実を冷静に受け止めておかなくてはなりません。
ある日、突然亡くなるということもあるでしょう。不治の病を発症することもあるでしょう。そのとき、どう心を保つのか、どうしたいのか、金銭的にどこまでのことができるのかなどについて考えておくことは大切なことです。いずれ別れがくることだけは紛れもない事実なのです。普段から考えておくことが、よりよい看取りへとつながるはずです。(P94)

まさにそのとおりだと思います。これが「覚悟」というものなのかもしれないと思いました。

この文章に続いて、「突然の別れの場合」「老衰で息を引き取る場合」「完治が望めない病気の宣告を受けた場合」の3つの事例を挙げ、覚悟の仕方、看取り方、飼い主の気持ちの持ちようなどについて説明しています。ここは猫飼い必読箇所だと思いました。

老猫の看取りで多いのは病気を抱えている場面ではないでしょうか?余命幾ばくも無くなってきたときにどこまで治療するのか。金銭的なこともありますが、入院させたまま最期を迎えるのか、それとも治療をやめて家で静かに見送るのか。それぞれの飼い主の考え方次第で「正解」は飼い主の数だけあるのだと思います。その考え方や自分の正解を導くためのヒントも本書には書かれていますので、まだ猫が元気なうちから「縁起でも無い!」と思わずに読まれることをお勧めします。
いざその時を迎えた時にあわてず、十分手を尽くせるはずです。たぶんそれでも私は十分うろたえてしまうだろうなぁとすでに自覚していますが。

当ブログの連載「老猫と腎臓病(腎不全)」でも書きましたが、老猫がかかりやすい腎不全(15歳で全体の3分の1が罹患していると言われています)と自分の猫が診断されて初めて「自分の猫が年老いた」と自覚したと言っても過言ではありません。おそらくそんなことがなければ「ああ、ことしは14歳になるんだなぁ」と猫が若いときと同じように漫然と暮らしていたのではないかと思います。

 もちろん、年齢ごとに相応のごはんに切り替えてきましたが、最期の日までの時間の過ごし方や(あとどれくらいあるのか、という認識も含め)、必ず訪れる「その日」のことを腎不全だと診断されるまで真剣に考えたことはありませんでした。(「自分が先に死んだら」は対処してあるのですが・・・)

もし、腎不全にならなかったらたぶんそれらが突然降りかかったように感じ、あたふたと後悔まみれで過ごしていたんじゃないかと思います。そしてやってくるのは重度のペットロス・・・。

現在は多少なりとも覚悟ができ、一緒にいられる残り時間を大事にしようと思えるようになりました。今日のような日が当たり前に明日もやってくるとは思わないようにしようと、今日お互いに生きていることに感謝してなるべく猫と過ごす。これを日々心がけていきたいなぁと、この本を読んで改めて思った次第です。10歳以上の猫を飼っている人は必読、これから飼う人もまだピンと来ないかもしれませんが、一読して手元に保管しておくことをお勧めします。良書。


【2冊目の紹介はこちらになります】
1229 老猫と腎臓病(腎不全)12 老猫と暮らすための本をみつけました(その2)

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