2014年8月17日日曜日

0898 岩合さんのトークイベントで聞いた話

先日、三越札幌店にて写真家・岩合光昭さんの写真展「ネコライオン」が開催されました。
期間中、2日間にわたって行われたトークイベントの最終回に参加し、今回の写真展の苦労話や、猫写真の撮り方、ライフハックにも通じる撮影裏話などを聞いてきました。

写真展「ネコライオン」は、同名タイトルの写真集なかから選ばれた写真が展示されていました。ネコとライオンの似たような仕草の写真が比較できるようになっています。
写真展のチケットと写真集の表紙に使われている「左半分がネコ、右半分がライオン」という顔写真は、その見事な合体に思わず二度見しました。

さて、もの書き写真堂が疑問に思ったのが「ネコが先か、ライオンが先か」ということでした。
これについては、岩合さんご本人がイベントで種明かしをしてくれました。
まずはネコから写真を選び、これまで撮りためたライオンの写真から同じような仕草のものを探したそうですが、写真集用の写真を選ぶのになんと6ヶ月もかかったそうです。

そもそもなぜネコとライオンが合体したのか?
最初はネコだけで東京都写真美術館で写真展を行う予定でしたが、「ネコでは写真芸術という観点ではちょっと・・・」と言われ「じゃあ、ライオンでやりましょう」となったけれど、「それでは他のイベント会場でお客さんが集まりません」と企画関連の人に言われ、「じゃあ、ネコとライオンを合体してしまおう」ということになったのがきっかけだそうです。

撮影のコツについては、ネコに限らず動物を写すときは動物の目の高さとカメラレンズの高さを同じにすること。だからネコは這いつくばって撮ることになるわけですね。

ネコが水を飲んでいる写真では、舌を出した瞬間を狙ったのに舌が引っ込んだ写真ばかりになってしまうという人は、逆に舌が引っ込んだ瞬間にシャッターを押すとうまくいく確率が上がるそうです。
だいたいにおいて「あっ」と思ってからシャッターを押すまでにタイムラグがありますので、このほうが逆にタイミングが合います。それでも合わないときは、違うタイミング(舌が半分引っ込んだところなど)で何度か練習するといいそうです。

また、ただきれいだから、かわいいからといって撮るのではなく、何らかのストーリーや訴えたいものを意識して撮ること。岩合さんが写真コンテストの審査員として選考するときには、それが出ているかを見るそうです。説明書きがなくともおのずと写真から訴えかけてくるそうです。

撮影のエピソードでは、金沢在住が長い方にネコのいる場所を案内してもらった際、その方が「兼六園の屋根に登っている猫は初めて見た」と言ったのだそうです。(今回の写真集および写真展で使われた写真のエピソードです。)
でも、岩合さんの長年のネコ撮影歴から、その方が単にネコを意識して見てなかったせいではないかと思ったそうです。おそらくネコたちはいつもそこにいたかもしれず、それを意識して見ていなかったのではないかと。

ではなぜ今回目に入ったかというと、「ネコのいる場所を案内する」といういつもと違った視点で周りを見ていたから。「見慣れた風景でも視点を変えると新たに見えてくるものがある」という話は、人生のいろんな場面で言えることだなぁと、聞いていてつくづく思いました。

もうひとつうなずいたのが、ひとつを見てすべてを見たと思わないことという内容のお話でした。

岩合さんがアフリカで撮影していた時のエピソードです。夜明け前にハイエナがヌーを倒して(ハイエナも狩りをする!)それをライオンの雄が横取りした場面を撮影していた時、夜が明けて観光客が近くまで見学にやってきた際、英語圏の人が「やっぱりハイエナはずるいよね。ライオンの獲物を横取りしようと待機している」と話しているのが聞こえてきたそうです。
一部始終を見ていた岩合さんは思わず訂正しようかと思ったそうです。そして、先入観の恐ろしさを感じたと言います。ハイエナといえばライオンなどの獲物の残りものをいただくずるいやつというイメージが確かにありますね。

また、よくテレビで肉食獣が草食獣を倒して食べているシーンを「凄惨なシーン」と言って放送する姿勢も疑問だと言います。肉食獣は必要なものだけ捕って食べているだけで、しかも実際に見ているととてもおいしそうに食べていて、凄惨なシーンには見えないのだそうです。ハイエナから奪って食べていた雄ライオンもヌーの肉をおいしそうに食べていて、岩合さんも思わず「食べたい」と思ったそうです。
いずれの話も、先入観でものごとをみてはいけないということでもありますね。

トークイベントは30分ほどでしたが、会場からは「また来年も写真展をやってください」との声があがり、岩合さんからも前向きに検討しているとの回答がありましたので、次のネコ写真展とトークイベントを期待したいと思いました。
その際には、今回行けなかったネコ好きさんは出かけてみてはいかがでしょうか。



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